6月18日(火)にNHKで放送されていたクローズアップ現代のテーマが興味深かったので録画していました。
テーマは「薬がない」です。
たまたまNHKを視聴していたタイミングで番宣が流れてきて面白そうだな、と。
ちょっと風邪を引いた時などに医薬品を手にする機会も少なくないですし、生活に密接に関わることです。
一体何が起きているのでしょうか。
薬が受け取れなかった経験
近頃、咳止めであったり抗生物質であったりを薬局で貰おうにもメーカー出荷調整の影響などもあり、受け取るまでに時間が掛かってしまったり他の薬局に行くことになったりします。
(コロナ禍が始まった頃からそんな状況が増えた印象・・・?)
状況によっては処方箋を発行してくれた病院やクリニックに薬剤師さんから問い合わせてもらって処方された薬を変更してもらうこともあります。
私も薬が受け取れなかったり、今ある薬剤に変更して貰ったりした経験があります。
何が起きている? 増大する医療費と医薬品によるコスト
相次ぐ品質不正問題や原材料不足が例に挙げられていました。
また、併せて取り上げられていたのが医療費の増大と後発品の生産供給についてです。
年々増えていく医療費のうち、国は薬剤にかかる費用を減らそうとしています。
薬剤の値段は国が決めており、一部例外もありますが薬は世に出始めてから時間が経つほどお薬の値段は下がっていきます。
世に出始めたばかりのお薬は新薬、先発品などと言われますが、これらは配合されている有効成分となる化合物の特許を取得してることやその新規性や画期性を評価されて高い薬価(薬剤の値段)が付けられます。
それに対して後発品(ジェネリック医薬品)は世に出てから時間が経ち、特許も切れたことで薬価が安いお薬です。
薬剤にかかる費用 先発品と後発品
新薬(先発品)は「世の中に出始めた薬剤で特許がある物。新規性が高く、これまでになかった有効性が期待できるため薬価(お薬の値段)が高い」お薬です。
後発品(ジェネリック医薬品)は「世の中に出始めて長い期間が経過して特許が切れた薬剤です。有効成分は先発品と同じで値段は安価」なお薬です。
ですので後発品があるお薬に関しては薬剤費を抑えるために「新薬(先発品)ではなく後発品を使いましょう」という流れがあります。
「医療費のうち、薬剤費用がかさんでいるから減らしましょう!」という考えは理解できます。
投資の入金力を高めたい場合もまず支出を抑える事を考えますよね。
医薬品の供給は慈善事業ではない
ただ、この問題に関してはそう簡単にはいかないと個人的には思います。
後発品は「成分が一緒」で「値段が安い」のです。
細かなコストは違えど、中身がほぼ変わらないものを安く売れば「利益が少ない」ことは明確です。
また、新薬メーカーのA社が「A内服錠10mg」という製品を出していたとします。このA内服錠10mgを売り上げて得る利益はA社の物になります。
A内服錠で治療できる疾患市場の利益はA社に集約されるイメージです。
しかしながら後発品メーカーが後発品を生産する際、複数のメーカーが同じ有効成分の後発品(ここではA内服錠のジェネリック医薬品)を生産します。
A内服錠の市場規模も後発品の登場により小さくなり(薬価は安くなるが、患者数はいきなり増えない)、かつその市場を複数の後発品メーカーで分け合うことになります。
こうなってしまうとメーカー各社は利益を上げることが難しくなります。
医薬品メーカーのような生命関連企業が利益を上げることに対しては様々な意見がありますが、適切な形で利益を追求する必要があるのではないかと個人的には感じます。
医薬品メーカーが利益を追求する意義
あくまで私個人の考えにはなりますが、医薬品メーカーが利益を追求する意義に関してです。
新薬メーカーでは「新薬の開発」をしています。
一般的に新薬の開発には数千億の費用がかかり、10年ほどの開発期間が必要になります。
新薬になりうる化合物が見つかっても治験の段階で安全性が担保できないことがわかり、開発が中止されることも珍しくはありません。
新薬開発は途方もなく困難な道のりです。
1つの薬が患者さんに届くまでにはとてつもない費用と時間が掛かります。
医薬品の値段が時間とともに下がっていくのは仕方がないかもしれませんが、特許が切れた途端に後発品が世に出始め、利益を上げにくい状況になってしまいます。
そうすると新薬の研究開発に投資する費用も賄えなくなってしまいます。
後発品メーカーでは研究開発に掛かる費用は新薬メーカーほどではないかもしれませんが、1つの製品では利益が少ないので多種類の後発品をラインナップしていることが多いと思います。
しかしながら1つ1つの医薬品の利益は新薬ほどは大きくはないかと思いますので、世の中で「医薬品がない」状況になっても生産ラインを増やすことが難しいのかと思います。
設備投資しても元々安い薬が時間とともに更に安くなるので、設備費の回収も難しいでしょう。
新薬メーカーには新薬メーカーの、後発品メーカーには後発品メーカーの事情があります。
医療費を抑えるための一環とはいえ、利益を追求しつつある程度集中させなければこの先新薬が生まれにくくなってしまいますし、後発品に関しても欠品の状態が続いてしまうのではないかと思います。
雑感
一概に何が良くて何が悪いと言及し難い問題かと思います。
あちらさん通ればこちらさん通らずと言いますか。
新薬開発も進んで欲しいですし、より安価な医薬品が安定して患者さんに届く社会になることを願います。